2000年6月アーカイブ

白雪おじさん

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幼児期の睡眠欲は放任されます。寝ていてくれた方が有り難いからです。 選挙と同じです。 抑圧はもうちょっと後で、社会との接触ををもつようになってから始まります。 誰が決めたのか、1日の睡眠時間は8時間が適当なのであり、ナポレオンは3時間しか寝なかったのであり、受験生は5時間も寝ていると取り残されてしまう... といった特殊な社会の規範がそれにあたります。

これを素直に受け入れると、幼児期の過度な睡眠に対して罪悪感を抱くようになり、超自我となって、睡眠欲を抑圧するのです。これは少なくとも社会での落着き場所を確保するまで、すなわち自我の安定を得るまで続きます。 ある事例を見てみましょう。

彼の休日の朝は、オムレツかスクランブルエッグにベーコン、少量のサラダ、トースト、そして1本の缶ビールで始まります。 朝食が充実しているのは、前の晩あまり食べていないことを意味します。 暫くまどろんでから、図書館に出かけスポーツ新聞をチェックします。 昼食は、いつ行っても空いているので気に入っている中華料理屋に寄って、あんかけ焼そばを注文し、出てくるまで生ビールを飲みながらフォーカスかフライデーを見ます。 家に帰って、借りて来た本を読んでいるうちにうたた寝をします。 問題はばんめしだと頭を悩ませながら、缶ビールを1本、そのあとは酒か焼酎かウイスキーにお手製の懐石風... 寝る前に、なぜか下の階に隠してあるサウナで一汗流し、ハイボールを少々...

このアルコール依存症と診られる人物の、休日の過ごし方に、抑圧から解放された反動を認めることができます。 アルコールは睡眠を助ける手段として捉えるべきであり、失なわれた睡眠の代償形成とみなすべきで、単なる酒好きとして片付けてはいけません。 好奇心旺盛な幼児期のように、つかれはてて眠るということができなくなれば、なんらかの補助手段を用いねばならないのです。

フロイトは性の心理的な発達過程を、口唇期、肛門期、男根期、性器期とよんでいます。 食遍歴は、母乳期、離乳食期、アルコール期となり、最後はお迎えが来るまで病院のベットで眠り続ける点滴期となるのです。

永遠の食遍歴

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8:1:1 「分とく山」野崎洋行が説く『美味しい方程式』という本、キッコーマンの広告に抜粋が使われているのを、見た方もおられるとおもいます。 出汁、うす口醤油、みりんの割合を指します。これを応用することによって、お浸しから茶わん蒸、煮魚、白あえと、写真と簡潔な語りで構成されたとてもシンプルな料理本です。

実家に行った時、姉が買っておいてくれました。 実はその前に帰った時、婦人雑誌の付録になっていたのを、貰って帰ろうとしたら、たまたまそれが図書館の本で、といういきさつがあったのです。 母からそれを聞いて捜しておいてくれたのでしょう。 うちの一族の女性達はおよそ料理といったものに、興味を示すことはなく、何か期するものがあったと思われます。

今年にはいって「ものぐさ精神分析」の岸田秀の本を十数冊読んでしまったのですが、「幼児期の、一方的に母親に依存しなければならない屈辱の関係から、自我の形成が始まる」的に味覚が形成された、とすると、はなはだこころもとないことになります。 実際、ひと口食べて「 ! 」というよりは「??」がほとんどで、しばらく食べ続けないと、旨いのかまずいのか結論が出せません。

フロイトの精神分析では、幼児期の抑圧された性が非常に重要視されています。 食欲や睡眠欲ではなく、ちょっと連想しにくい幼児期の性欲に目をつけるところが、大思想家たる所以なのでしょう。 一家言ある味覚オンチの料理人は、残る二つに目を付けました。

幼児期の抑圧された食欲といえば、これはもう母乳です。あのまずそうな離乳食が、後の食生活に及す影響の大きさを見落としてはなりません。 ヒステリー症が抑圧された性に原因を求めるように、拒食症をダイエットのせいにして済ませてしまってはならないのです。

生後5ヶ月で、あの食欲をそそることのない離乳食に対面させられた幼児の、心の奥深くに仕舞い込まれた母乳への愛着は、エスと化して、後の食遍歴への旅立ちとなるのです。 永遠の女性を求め続けたカサノバの例をひくまでもなく、偏食児の求めているものも、これで想像がつくのではないでしょうか。

料理長の裏技

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息子の嫁とグルになったカミサンから「困ったお父さん...」と馬鹿にされない為に、親父は厨房で自立しなければいけません。 プロの料理人は、大人数分いかに手早くこなせるかが重要なのでありまして、修業といわれる年期の大半はそれに費やされるのでございますから、別に恐れる必要はありません。 ましてや自分の口と手懐けた子供の為の家庭料理なんぞ....

ここは一足飛びに懐石料理に挑戦し、独り静かに盃を傾けましょう。 家庭料理に一目で差をつけるには、器と盛付けに尽きます。 自分で片付けることを考えて大きめの物を用意します。 100円ショップや露店は避けましょう。 盛付け用にそこらで千切ってきたタンポポや笹の葉をあしらえば出来上がりです。

問題は料理のほうですが、これも恐れるに足りません。 和食の味付けなんぞ市販のそばつゆを使えば無難に仕上がります。 たべるのは自分なんだから

少量ずつ盛付けないと懐石風になりません。 毎晩おなじ組み合わせにならないよう、せめて一品くらいは入れ替えましょう。 女どもにマズそうと思わせてはいけません。 独り盃を傾けながら、もの足らないなと想ったら彼女達の食べているものをつまんで、批評してあげるのもよいでしょう。