職人

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 生田耕作『黒い文学館』に破廉恥3人組としてサド、ラクロ、レチフが紹介されています。サドはともかく、『危険な関係』のラクロはそんなに破廉恥かいな、という気がするのですが、18世紀末のフランスの話しなので、悪徳とエロスを題材にするだけで十分その資格があったのでしょう。

 レチフは読んだことがありませんが、植字工から作家になったという経歴の持ち主で、靴フェチの告白もので一世を風靡したのだそうですが、すごいのは原稿を書く間も惜しんで自分で活字を拾って2週間で長編小説を仕上げてしまったというところです。コンピューターのおかげで植字工がいなくなってしまった今、これをどう評価するべきか。

 鉄工所には原寸屋という職人がいました。図面をみて定盤に原寸の墨を出し、型紙なんかをつくる人。いちど図面を描くところを見ていたらともかく速い。考えるより勝手に手が動くところに職人の職人たるところがある。

 枝を1本はらって、お茶をすする植木屋みたいに、どうもぼくらは製図板の前に座っているとボーッとしている時間が長くなって、気分転換にコーヒーを入れたりして、そのうち本当に飽きてしまったりして... 。 時間がなくなってヒシこになって仕上げるまでの、時間のロスは膨大なものがあります。

 職人の昼グソ女郎の夜グソ。

 建築士の試験を受けるとき、図面の講習に行ったら、一日1枚、30枚描くと勝手に手が動くようになりますから、と教えてくれました。考えている暇はないのです。5時間わき目も振らず描いても間に合わない。試験が終わってたばこを吸ったらクラクラッときて危うくへたり込むところだった。

 最近はCAD が普及して原寸屋の仕事はみなコンピューターがやってしまいます。もともとCAD は原寸なのです。設計屋の需要もなくなっているみたいで、この不況のなか転職するのは不可能と日経コンストラクチャーに出ていました。

 三角スケールの1/500 のひと目盛が全然見えなくなって、このへんかなと適当にマークして。
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